★−理紗羅-の【どうわ集】★

童話:かちかちやま


むかしむかし、あるところにおぢいさんとおばあさんがおりました。 毎日毎日おぢいさんは畑(はたけ)ではたらいて、「一粒(つぶ)は千粒になぁれ。」 とうたいながらまめをまきました。 まいにち々たぬきが畑に来て、同じように 「一粒は一粒のまぁまよ。ぜんぶ食べるよ。」とうたっていました。
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画像は永岡書店絵本No16かちかち山より引用
 
だからいつも、つぎの日には豆は一粒ものこりませんでした。 わるいたぬきがぜんぶ食べてしまうのです。そのせいで、おぢいさんとおばあさんの くらしは貧乏(びんぼう)でした。

ある日おぢいさんが畑に来ると、また豆がなくなっていました。 おぢいさんはおこり、たぬきをつかまえることにしました。 つぎの日タヌキがすわっていた木の根にまつやにをぬりつけ、いつものようにうたいながら、 豆をまきはじめました。また、たぬきが来て、いつもと同じ木の根にすわり、 おぢいさんをからかいました。おぢいさんは

「こらぁ!わるタヌキめ!」

おおごえをあげると、タヌキはにげようとしましたが、まつやにでにげられません。たぬきをつかまえてふじづるでしばり家まてつれ帰り、のきしたにつるしました。

「おばあさん、やっとあのわるいたぬきをつかまえた。 こんばん、おいしい狸汁(たぬきじる)を作っておくれ。」と言って、おぢいさんは畑にもどりました。
おばあさんはうすでぐるりぐるりと米をひきはじめました。
米でつくったダンゴは、おぢいさんの大こうぶつでした。つるされていたたぬきは
「おばあさん、一人でつかれるでしょう。 てつだうから、このふじづるをほどいてくれませんか。」

とたのみました。   おばあさんはまよっていましたが、
「まぁ、てつだってもらおうか。」

と言って、なわをといてやりました。はなされたたぬきはてつだうふりをしてきねをとり、
おばあさんをがつんとなぐって、ころしてしまいました。
そして、おばあさんのかわをはがすと、にくを切りとって汁にいれ、
タヌキ汁ではなく、ばばぁ汁を作りました。それからおばあさんのホネを流しの下にかくすと、
たぬきはおばあさんにばけ、おぢいさんの帰りを待ちました。

夕方になって、おぢいさんが山から帰ってきました。
「ああ、おなかがすいた。お腹がすいた。タヌキ汁はできているかな」
「はいはい、もうすっかりできておりますよ。たんと食べておくれ」

おぢいさんが汁を食べると、妙(みょう=へんな)な 味がします。

「ばあさん、ばあさん、なんだか妙な味がしねえか」
「そういえば、少し年をとったタヌキで、そのせいではないかいな」
「そ う だ ろ う か ?」
おぢいさんはけげんに思いながらも、お腹がすいていたので、 何杯もおかわりをし、タヌキ汁を腹いっぱい食べました。
「あぁ、ようやく腹がいっぱいになったぞ」

おぢいさんがそういって、楊枝で歯をせせっていると、目の前のおばあさんがペロリと タヌキに変わったのです。 そして、
やーいやい じいじいめ  ばばぁ汁くうた じいじいめ
ばばぁの肉が歯についた〜〜ぁ ながしの下のホネをみろ

といって、はやしたてながら、わるいたぬきは山の奥に逃げ帰っていきました。
「なんとしよう。知らぬこととはいえ、ばあさんを食ってしまった。 にくらしいタヌキめ。くやしい、くやしい」

おぢいさんはおんおん泣くばかりでした。 そこへやってきた、ポッチャリとかわいいウサギ。

「おぢいさん、どうしてないているんですか。」と聞くと、 かわいそうなおぢいさんがたぬきのことを話しました。
「そうですか、じゃあわたしといっしょにあだうちをしましょう。」

と言って、うさぎは山へでかけました。 タヌキがねているあなのよこで、
たちがや かるぞ、さあかるぞ  あすは
ちょうじゃの やねがえだ。と歌いました

すると、タヌキはうす目をあけて、
「なんと、ちょうじゃさまのやねがえとな」

長者さまの屋根替えのときは、萱(かや)をいくらでもたかくかってくれるのです。ウサギは、
「そうさな。これから、萱刈りに行くところだ。一緒に行こうではないか」

とタヌキを誘いました。タヌキはまんまとさそいにのり、
ウサギとタヌキは山へいき、萱を山ほどかってせおいました。
しばらく行くと、ウサギは、
  「ああ、あかぎれがいたい、あかぎれが痛い」と、なきごとをいいました。
     そして、  「もうゼニはいらない。ここに萱をすてていきます」と言いました。
それをきいて、よくのふかいタヌキは、

「お前、ここにすてたのだな。それなら、それをわしがひろうたぞ。ひろうたぞ」 ウサギのぶんの萱もしょって、やまみちをおりていきました。

すっかりみがるになったウサギは、ひょいひょいとタヌキの後を追うようについていきました。

あかぎれの痛みはどこへいったのやら。
そのうち、ウサギは火うち石を取り出し、かっちかち打ちつけました。

「あれ、かっちかちと音がする。その音は何だろう」

「ここはな、かちかち山というぐらいで、
かっちん鳥がないておるのさ」

ウサギはこう答えて、さらに、かっちかちと火打ち石を打ちました。

そのうち、タヌキの背中の萱に火がつき、ぼうぼうと音がします。

「あれ、ぼうぼうと音がする。その音はなんだろう」

タヌキは小山ほどの萱を背負っているので、振り向くこともできないのです。

「ここはな、かちかち山のとなりのぼうぼう山
  というて、ぼうぼう鳥がないておるのさ」

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そういってるうちに、どんどん火が燃えだし、ウサギはさっさと逃げてしまいました。タヌキの背中は大火事になり、「ああ、あちい、あちい。人のせなかにかじをおこして、なんというウサギだ!」 とおこりましたが、ウサギのかげもかたちもありません。

タヌキはころげまわって、ようやく火をけし、それからしばらく、あなにこもったままでした。

四、五日もたったころ、ウサギがたですりみそを手にしてとおりかかりました。
それをみたタヌキは、はをむき出しておこりました。
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「はて、なにをおこっておるやら。萱山のウサギは萱山のウサギ。わしはなにもしらぬぞ。 まちがわないでおくれ。同じウサギでも、わしは たですりみその ウサギだよ」 とウサギは知らんかお。

そして、タヌキのせなかをみて、「これはこれは、ひどい火傷(やけど)だ。 ちょうどいい、たですりみそをもっておる。みそはやけどによくきくからな」  そういって、味噌をすりこんだもんだから、たまらない。

タヌキはあまりのいたさにとびあがり、ひぃひぃほぉほぉとなきだしてしまいました。

それから川にとびこんでみそを洗いおとしましたが、せなかがいたくて、 ないてくらすばかりでした。
「こんどこそ、ウサギを見かけたら、どんなウサギでも、片っぱしからひんむいて、食ってしまおう」 タヌキは、そう心にきめていました。 その日はあさから、それはてんきのよい日でした。

入江(いりえ)でウサギが木をきっているではありませんか。こんどこそ、食ってしまおう。タヌキは近づいて、「おい、ウサギ。このまえはせなかに火事をおこしたり、たですりみそをぬりたくったり、ほんとうにひどい目に合わせてくれたのぅ。きょうこそ、とって食ってしまうからな。」  すると、ウサギはこういうのです。「なんのことやら。わしは舟作りのウサギだもので、ほかのウサギのことは知らぬ」

「なになに、舟作りのウサギとな。舟を作って何をするのだ?」  「舟いっぱい魚をとるのよ」

よくのふかいタヌキは、舟いっぱいの魚と聞いて、魚をとってから、ウサギを食えば、 魚もウサギも食べられるぞ・・とかんがえ「ところで、わしも舟作りにまぜておくれ。 魚とりにもまぜておくれ」そういうと、ウサギは、
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「ああ、ええよ。だが、この舟は一人乗りだから、
もう一つ、ちがう舟を用意してやろう」
タヌキのために泥の舟を作ると、こういうのです。

「わしはしろいから白い木の舟、タヌキどんは
  くろいから、土を固めた黒い舟がいいよ」


タヌキはすっかりよろこんで、自分も舟にどろをペタペタぬりつけました。

やがて舟ができあがり、二つの舟にはつりに出ました。
ほどほど岸からはなれると、ウサギはいい声で、
木の舟はぽんぽこしょ〜 土の舟はどんどこしょ〜と歌い
木の舟ばたを ぱんぱんぱぱんと、たたいてみせました。

すると、タヌキも土の舟ばたをどんどんと、たたいてみせました。
そのとたんに、なんと土の舟はぱっかりと二つにわれて
ぶ く ぶ く と 沈(しず)んでしまったのです。


「助(たす)けてくれ、助けてくれ、しずんでしまう。わしはおよげないのだ」 タヌキはウサギに助けを求めましたが、ウサギはそっぽをむいたまま。「おい、お願いだ 助けてくれ。」 タヌキがそういうと、ウサギはこういうのです。

「お前は、おばあさんを殺して、ばばぁ汁にして、おぢいさんに食べさせた。 おぢいさんは悲しみのうえに、おばあさんを食べてしまった苦しみで泣いてばかりおるぞ。 そのときのかたきをとろうと、わしがけいかくした。

萱山のウサギもわし、たですり味噌のウサギもわし、みんなわしの仕業(しわざ)よ。

こういいながら、オールでタヌキをたたくと、タヌキはぶくぶくと沈んでいき、 うき上がってはまたたたかれ、とうとう死んでしまいました。

ウサギが、死んだタヌキをかついで、おぢいさんのところにもっていくと、 おぢいさんは今度こそ、タヌキ汁を作って、たらふく食べました。 おばあさんのかたきをとれて、ようやく、おぢいさんのなみだはとまったといいます。
さあて、こども版のかちかち山をどちらのストーリーにしようか 考えましたが、
仇討ちの場合の前置きは、無残なほうがよろしいかと思い、ばばぁ汁になっちゃう
むかし話を、掲載しました。また狸も溺れ死んで狸汁になっちゃうストーリです。
最近の考えでは、おばあさんが殺されて食べられてしまう、とか 動物を溺れ殺し
それを食べちゃう話は幼児の情操教育によくないとされ、仇討ち昔話は変りました
永岡書店版もおばあさんは怪我で寝込むが生存 狸も改心し・みんな仲よくです。

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